日々是四面楚歌

いい大人があれこれ語るひっそりしたブログ

BeatsXを買った―その②

      2017/04/27

昨年秋の発売予定がずれ込み、本家AirPods出荷の遅れに伴って結局年をまたいだ末に、ようやく2月11日に発売されたBeatsX。かなり間が開いてしまったが、第2回のレビューをお送りしようと思う。

 

【イヤフォンと一口に言っても…】

私がこれまで使用していたのはiPhone純正のEarPods。インイヤー型のワイヤードイヤフォンだ。対して、BeatsXに先行して発売されたAirPodsはインイヤー型のワイヤレスイヤフォン。そしてBeatsXはカナル型のワイヤレスイヤフォン。このようにイヤフォンと一口に言っても、ワイヤード/ワイヤレスといった接続方法のほかに、インイヤー型とカナル型に大別できる。以下、その傾向を簡単にまとめた(あくまでも一般的な傾向)。

イヤフォン

種類

インイヤー型

カナル型

耳への当て方

開放(浅い) 密閉(深い)

音質

音漏れ

しやすい

しにくい

周囲のノイズ

機器の大きさ

単純にみると、音漏れせず周囲のノイズを拾いにくいカナル型の方が優れているように思えるかもしれない。ところが音楽を外に持ち出して聴くにあたっては、環境との折り合いをどう付けるかの問題も発生してくるので、どちらが良いか判断に迷うことになる。

 

【タイプ別の特性と「ながら聴き」の盲点】

通勤通学などで電車に乗る時などでは特に、音漏れしにくく周辺のノイズを拾いにくいカナル型が優れていると思える。しかしカナル型のこの特性は、同時に周囲の発する情報(環境音)を遮断するという側面も併せ持つ。たとえば電車の遅延や乗り換えなどのアナウンスを聞き逃す、交差点で車が接近していても気付きにくい、などのことが挙げられる。こうした周辺環境の変化にも気を配りたいなら、インイヤー型は依然として有力な選択肢となるだろう。耳から抜けやすいが、その分耳への密着度も低いため疲れにくい。その一方で音漏れがしやすいため、物足りなく感じてボリュームを上げ過ぎてしまい周りに迷惑をかける、大音量で鼓膜に負担をかけてしまうことがあるなどのデメリットもある。いっぽうで、カナル型は周囲の環境が発する音を遮断する性能が高いため、音に集中できる・すべき状況下でその良さを更に発揮できる。いっぽうで耳への密着度が高いため、装着による疲れを感じやすいというデメリットもある。

ちなみにイヤフォン全体としての欠点は、イヤフォンの一部が衣服などと擦れることでノイズが発生することと、装着者本人の体内で発するノイズを拾うということ。この傾向は特に密閉度の高いカナル型を装着している時に顕著で、装着したままの食事や歯磨き、通話などは(私には)かなり厳しい。口の中の音や自分の声がイヤフォンにより密閉された耳の中で反響してしまうのだ。結局使用を一時中断するか、通話時は通常の受話器による通話のように片耳を外して通話せざるを得ない。

 

【音を外に持ち出し聴くことが出来ればそれでよいのか、という問題】

次にコミュニケーション的側面から見てみよう。コンビニなどでイヤフォンを付けたままレジに並ぶ客をたまに見かける。これは本人にそのつもりがなくても、必要最低限のコミュニケーションすら一方的に遮断しているように誤解されても仕方がないような気がする。同様に、イヤフォンを装着した客と見るや無言で対応する店員にも同情の余地を認めつつ、販売員として最低限の職務を放棄してしまう態度は残念だと感じる。とは言えやはり、イヤフォンを使って音楽を外に持ち出し聴くのはごく個人的な都合であり、結局はいつかどこかの時点で、周辺環境との間でどのように線を引くべきかを考えざるを得ない。

こうした面から見ても、カナル型とインイヤー型のどちらを選ぶかは、装着感の好みによることはもちろん、耳への負担や周囲との距離感をどのように捉えるかでも変わって来そうである。これはかく言う私自身も、未だに解決しきれていない問題でもある。

 

【AirPodsと他のワイヤレスイヤフォンは単純比較できるのか?】

ワイヤレスイヤフォンを検討するにあたり、選択肢は3つあった。

Apple AirPods/Beats by Dr. Dre BeatsX/PHILIPS TX2BT

意外に思われる向きもあろうが、結果的にここからいちばん最初にAirPodsが外れた。ワイヤレスイヤフォンを意識するきっかけがAirPodsの発表だったのにも関わらず、である。

AirPodsを使用している時、片耳を外すだけで再生がストップするというのは、先のコンビニのくだりで述べたようなシチュエーションで大いに役立つだろう。音楽再生が自動的に停止するという実際の機能に加え、外すというジェスチャーによって他者へコミュニケーションの意思があることを伝えられるので、操作方法としては非常にスマートである(もっとも、詳しくない人があれを見てイヤフォンであると認識できるかどうかは別の問題だが、少なくとも何やら耳栓のようなものを外しているということは見てわかる筈)。ただ、AirPodsに関して言えば、落下と紛失の心配が最後まで拭えなかった。サードパーティー製のケーブルで左右を繋ぐという手もあったが、充電器を兼ねたケースにしまう時にいちいちケーブルを外さねばならず、いささか無粋である。ユーザーが自己投資してまでカバーする問題ではないようにも感じる。後にiOSのアップデートでiCloudを通じて紛失したAirPodsを探し出す機能が実装されたが、これも根本的な紛失対策とは言いにくい。また、操作面では音量調整やトラックの送り/戻しなどでSiriを呼び出して音声で指示しなければならない。Siriは装着中のAirPodsをダブルタップするだけで起動できるのだが、これではどうしても遠回りしている感じがする。AppleWatchがあれば音声による操作の必要はないようだが、iPhoneとAppleWatch、そしてAirPodsの全てを持っているという条件は金銭的な意味でもなかなか揃わないし、三位一体でないと望むように機能しないのも、マーケティング戦略としては巧妙かもしれないが、少なくともユーザー体験という面で言えば寸足らずである。加えて、自宅ならともかく、往来や電車の中でSiriを使うのは現実的ではない。他社製品を含め、音声入力は日本人のメンタリティに適した操作方法だと思えないし、実際に私にはSiriがiPhoneにとって必要不可欠な機能だとも現時点では感じていない。

ないないづくしで申し訳ないが、こうして見ていくと、AirPodsを使うにあたりSiriによる操作を諦めた場合、結局音量調整やトラック操作のために直接iPhoneに触るか、AppleWatchを通じて操作するかの二択となってしまう。更にAppleWatchを持っていなければ、その方法はiPhoneの直接操作のみに絞られ、AirPodsのアドバンテージは大きく殺がれる。おそらく僅かな可能性だが、この点は今後ファームウェアの更新などで操作感に手が加わることに期待したい。

とは言っても、耳に装着するだけで音楽再生を開始できるAirPodsの操作方法は、最もシンプルかつ最速の音楽再生のための操作であろう。ケースから取り出し耳に装着するだけで再生が開始されるのだから。また、BeatsXのような部分ワイヤレスではなく完全なワイヤレスであると言う点でも、"Air"Podsを名乗るのにふさわしい。装着も接続も空気のように軽やか。必要以上の存在を感じさせない。iPhoneとAppleWatchの両方をお持ちの方は、iOSデバイスとAirPodsの連携が提供するシームレスなワイヤレス体験を試さない手はないと思う(ちなみにiPadもサポートしているので念のため付け加えておく)。

ここまで述べてきたとおり、私はAirPodsとBeatsXを含む他製品を、同一線上で比べることはできないように感じている。同一傘下に並ぶAirPodsとBeatsXですら、W1チップやSiriといった基礎技術は共有しているものの、インイヤー型とカナル型、完全ワイヤレスと一部ワイヤードという違い以上の相違点がある。AirPodsとBeatsXは、ブランディングもマーケティングターゲットも、Appleの中では別の位置づけなのだろう。AirPodsが選択肢から早々に外れたのもこれが理由だ。要するにAirPodsはAppleのお家芸そのもの、他では味わえない経験を提供するApple製品の典型だが、チューニングがちょっと尖りすぎていて、比較の対象が見つからないのである。このように、AirPodsはSiriをはじめとした技術を駆使した、Appleが現時点で製品として提供できる理想のひとつと言って良いだろう。であるが故に、他のApple製品との親和性による統合的な環境を構築し、他のオーディオ機器メーカーが繰り出す製品とは違うところで勝負しようとしている。

一方のBeatsXはApple傘下の企業で、Appleが開発した技術とチップを使用してはいるものの、Beatsのオーディオデバイスブランドとしてのカラーを色濃く残す必要があっただろう。したがって、Appleの技術とブランド力、Apple独自のハードとソフトの融和という恩恵を受けつつも、価格設定をはじめとするキャラクターはオーソドックスなワイヤレスイヤフォンの範疇から大きく踏み出していない。未来ビジョンはフラッグシップたるAirPodsに任せておけばよいという判断もあったのかもしれない。

 

【結局BeatsXで良かったのか?】

ここまではBeatsXの相対的な位置付けと、これを選んだ経緯の話。しかし正直に告白すれば、BeatsXを他の数多くのイヤフォンと公平に比べることは私にはできそうもない。特に音質や再生性能の比較という点では全く自信がない。私自身が経験として持つ母数がきわめて少ないからだ。もともと使っていたEarPodsよりも音が良さそうな気はするが、新しいものを手に入れた喜びという補正がかかっている可能性も加味すれば「気のせい」として片付けることもできる。

ただ、新しいイヤフォンを探し始めた出発点に立ち返れば、その目的はイヤフォンと音楽再生端末をワイヤレスで接続できて、煩わしいケーブルの取り回しから開放されることにあった。次に、私は音楽に関して言えば雑食なので、できれば特定のジャンルに特化したイヤフォンではなく、オールラウンダーな性格のイヤフォンであることが望ましかった。BOSEなどは単純に価格的な問題もあったが、いわゆる「ドンシャリ型」とよばれる高音と低音を強調する傾向の音作りで、最初から選択肢に入ることはなかった。このバランスという観点でいうと、BeatsXの他には先にも述べたとおり、PHILIPSのTX2BTが有力な選択肢となったが、iPhoneやMacで使用する時の親和性(特にペアリングの手軽さはお見事)を考慮して今回の選択に至った。とは言っても、TX2BTも依然気になる製品ではある。BeatsXのこのアドバンテージがなければ、他にはONKYOなど国内メーカーの同価格帯の製品をもっと真面目に検討していたかもしれない(すれば良かったかと少し悔やんでもいる)。

 

【聴いてみた】

果たしてBeatsXが期待通りのサウンドを聴かせてくれるかどうか、ひととおりのジャンルを試してみた。試したのは室内楽、管弦楽(オーケストラ)、ピアノトリオ、カルテット〜セクステットのジャズ、大編成のジャズ、ラテン音楽、サルサ、アカペラ、ロック、R&B、ボサノヴァ、J-POP、スタジオ録音とライヴ盤の録音聴き比べなど。特に再現するのが難しいのは、おそらく大編成での演奏と、SEも込みで緻密に練られたスタジオ録音であろう。それぞれの楽器やパートの個性やソロ、音作りの意図が埋もれず再現できるか。音が流れる空間の再現性が高いかどうか。

結果は概ね満足のいくものだった。ワイヤレスイヤフォンという再生機器自体の限界もあるだろうが、私程度レベルのユーザーならば、イコライザの設定でカバーできる範囲のものでもある、と感じた。

なお、先にも触れたとおり、装着したままの食事や歯磨きは個人的にはおすすめできない。

 

【さらに使いこなすために】

サードパーティー製品を活用するのでない限り、通常はPCまたはMacのiTunesライブラリとiPhoneを同期して使うのが一般的な方法であろう。iTunesで作る万能イコライザ設定と、そのイコライザ設定をiPhoneで使用する方法もあるので、興味のある方はこちら(外部リンク)を参照されたい。

また、BeatsXに限ったことではないが、イヤフォンが耳に入る時の角度でガラリと聴こえる音が変わったりする。聴きながらグリグリとゆっくり耳に押し付けると、クリアな音が来る「ツボ」がある。この辺りはイヤーピースという、耳に直接当たる部品をサードパーティー製に変えると安定的な効果が見込めるのではないか(と思いつつまだ試していない)。材質もシリコンやウレタン、両者のハイブリッドまで、多くの製品が発売されている。自分好みの製品に出会えれば快適さはよりいっそう増すだろう。

 

【終わりに】

iPhoneの充電だけでなく、新たにBeatsXの充電状態にまで気を配る必要は生じた。しかしこれは現在のところ、ワイヤレスの恩恵を受けるためには払わざるを得ない代償だろう。それでもBeatsX購入後、出かけるときに外で音楽を聴くために、断線を気にしながら複雑に絡まったコードを解くという儀式が綺麗に消え去った。これは当初思い描いていた以上の快適さで、MacやiPhoneとの物理的接続から開放されるという当初の目的は充分に達成できたと言える。

総じてなかなか良い買い物だったのではないかと思っている。

この記事を書いている人

その先の勅使河原Pit
その先の勅使河原Pit
試される勅使河原Pitから

その先の勅使河原Pitへ

首都トーキョーから

怪電波を発信したりしなかったり

 - iPhone/iPad, Mac, どうでもいいネタ, ライフ, 周辺機器, 小噺(ネタ), 携帯デジモノ, 日常